「ねえ景吾、雪が降ってるよ」



外を見て行き成りが呟いた。
の視線の先には開いてはいないカーテンがストーブの僅かな風に揺れている。

「あーん?外も見てねえ癖に何言ってんだ?」



俺がそういうとは何故かこっちを見てにっこりと笑って言った。

「ううん、降ってる。景吾、カーテン開けてみてよ」



はカーテンをすっと指差して言った。
人から指図されるのは気に食わねえが、今は不思議との言葉が気になって俺は立ち上がってカーテンを開けた。
シャラ、とカーテンを引く音が室内に響くと同時に、の嬉しそうな笑い声も俺の耳に届いた。

「ほら!やっぱり降ってた」



驚いた。まさか本当に降っているなんて思ってもいなかった。
で驚いている俺を横目に窓に近寄って嬉しそうに雪を眺めていた。
吐く息の暖かさの所為で目の前の窓は徐々に白くなっていく。

「何で雪が降ってるって分かったんだ?」



の横顔を見ながら問いかけると、は視線を俺に向けることなく呟いた。

「んー、なんとなくだけど。あえて言うなら音が聞こえた、のかな」


「音、だと?」



帰って来た返答に思わず首を傾げた。
今まで音なんか全く聞こえなかったし、何よりずっと一緒にいた俺は気付かなかった。
俺はテニスをしているから運動神経感覚神経が他の奴等よりかはいいと自負していた、という所為もある。

「うん、雪が降ってる音」



ようやく俺の顔を見たはにっこりと嬉しそうに笑っている。
何だそんなに嬉しいのやら、笑っているにつられたように俺の頬も緩んだ。

「ああ、そうかよ。そりゃ良かったんじゃねーの」



節々納得がいかない点もあるが、の笑顔を見たらどうでもよくなった。
が言うんだから本当に聞こえたんだろう、雪の音ってヤツが。
深くは聞かなかった俺に何を思ったのか、はとんと俺の腕に寄りかかって呟いた。

「雪・・・積もるかな」


「さあな。何だ、雪遊びでもしたいのかよ?」



俺のからかったような台詞には不満そうに頬を俺を見上げてから、外を見つつ答える。

「違いますー。早く一面に広がる銀世界、ってヤツを見たいだけですー」


「・・・・・・」



黙っていた俺には首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。

「ん、景吾。どうしたの?」


「…スキー場でも行くか?」



それなら銀世界見れるだろ、と付け足すとはどこか不機嫌そうにふい、と視線を逸らした。
愛らしい仕草に思わず目を細めた。半分冗談のつもりだったのにここまで反応してくれる彼女が愛しくて堪らない。

「そういう問題じゃないの!ただ…雪が積もったら寒くなるなあって思っただけだもん」


「アーン?は寒いのが嫌いじゃなかったのかよ?」


「うん、去年まではね」



頷いたはそのまま俺の肩に再び体を預けた。
ぴったりとくっついた体からの仄かな体温が伝わってくる。

「今年は違うのか?」


「うん、好き。だって寒くても景吾が暖めてくれるんだもん」



そうでしょ?と嬉しそうに見上げてくるに愛しさがこみ上げてきた。
そっと見上げる瞼にキスを落として、を抱き締めた。






























こうして世界は色を失った
(雪が降ったからな)































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外見たら雪降ってたから勢いで書いてみました。
跡部久しぶりに書いたら書き方真面目に忘れた・・・orz