「ねえ、しゅうすけくん・・・・ずーっとのお友達で居てね・・・・?」

「勿論だよ、ちゃん!僕はずっと君の友達だからね!」


幼い時、何よりも大切な人と交わした約束。
それは今でも、情け無いほどに僕を縛り付ける。















































「それじゃあ、いってきます」

後ろ手にドアを閉めて、いつもと同じ時間に玄関の扉を開ける。

真向かいを見ると、同じように開けられた玄関の扉。

繋がる視線、緩む頬。


「おはよう、

「周助おはよーっ!」

そしていつもどおりの会話が繰り返される。







「周助、周助のクラスってさ・・・数学の宿題出た?」



「うん、一昨日出たけど・・・ってまさかまた忘れてたの?」


「・・・・えへ。昨日ちょっとテレビに夢中になっちゃってさー。
 って訳で後から周助のクラス行くね!」




まだ貸すなんてなんて言って無いんだけどなあ、って思ったけど

それを言ったらがスネちゃいそうだから止めて置く事にした。



昇降口でと別れて、教室への道を歩き出す。

学校の校舎は二手に分かれていて、僕は右に、は左にへと進んだ。

僕達は別に付き合ってる訳じゃないけど、道で別れる瞬間はいつまでも慣れる事は無かった。


僕が、の事を好きだったから。


だからたまに左側の校舎を振り返らずにはいられない。

見えるのは、いつだって女友達と楽しそうに喋っているの笑顔だった。


















昼食を食べ終えた昼過ぎ、空は朝より雲が多く掛かっていた。

一雨振りそうだな、と教室から珍しくグラウンドを覗いてみると

そこに居たのは体育の準備をしているであろうだった。
また、女友達と一緒に楽しそうに笑ってる。

本当に仲が良いな、なんて思っていると信じられない事が起こった。



達が話している所の近くで遊んでいた男子達が、誤ってにボールを当ててしまったのだ。

ボールは頭に当たったらしく、の身体が大きく揺れて崩れ落ちた。

男は慌ててをお姫様抱っこして、どこかに向かった。

きっと、保健室だろう。

その結論を出した時には、僕の身体はもう動いていた。

バッと教室を飛び出した時の僕の目は、これ以上無いくらいに鋭かっただろう。



バンッ、と保健室の扉を開ける。

そこにいたのはベッドに横になっていたと、 の頬に手を伸ばす遠野。

遠野は僕が来たのに気付くと、僅かに頬を染めてその手を引っ込めた。

僕は瞬時に分かった。遠野もの事が好きなのだと。


「ふ、不二・・・?どうしたんだ?何か用かよ?」



ぶっきらぼうに遠野が問う。それで誤魔化してるつもりかい?と思わず問いたくなった。



が倒れたって聞いてね・・・」



チラリとの方を見る、どうやら気を失っただけのようだった。



「そーか、には悪い事しちまってさー・・・。
 ボール当てたの俺だから、不二は心配しねーで戻って良いぜ?」


「・・・・・・・・・・・いや、ここにいるよ。遠野こそ戻ったら?」



遠野は、暫く僕の顔との顔を見合わせていたが、すぐに分かったと呟いて保健室を後にした。

僕はほっと息を吐いてから、すぐにの隣へと歩み寄った。





呼吸をするごとに揺れる睫毛、微かに動く唇。


の頬にそっと手を伸ばした。



の頬をゆっくりと撫でていると、遠い昔にと交わした約束を思い出して手が止まる。




「ねえ、しゅうすけくん・・・・ずーっとのお友達で居てね・・・?」



の幼い笑顔が、頭を掠めた。



「お友達・・・・・・・で、居るって言ったけど・・・・ね」





どうやら、無理そうだ。





誰にも聞こえないように呟いて、そっとの唇に僕の唇を重ねた。


呼吸の為に浅く開いていたの唇から、そっと舌を入れてゆっくりと絡ませる。





深く、深く・・・まるで御伽話のお姫様を眠りから覚ますように。





が息苦しさから目を開けた。

信じられないとでも言いたげなの目を無視して、僕はまだの唇を味わっていた。





甘い香り。これはきっと"お友達"で居られる最後の晩餐。





いよいよ酸欠になったらしいがドンドンと僕の胸を叩いた。

仕方なく唇を離すと、はバッとベッドから上半身を起こして僕を見つめた。


「しゅっ・・・しゅ・・・すけ・・・?なっ・・・何・・・やって・・・!」

まだ荒い息のまま途切れ途切れに言う



「何って・・・・キスだけど?」



「そっ!そーじゃなくてっ!な、何でこんな・・・!」




は顔を真っ赤にして唇を押さえた。



「うん・・・ごめんね、
 残念だけど・・・・・・・もうの"お友達"では居られないよ・・・」


「へ?何それ・・・・?ど、どういう意ー・・・!」



意味が分からないと首を傾げるの腕を掴んで、ベッドへと押し倒す。

ちゅ、と軽く唇に口付けてを真っ直ぐに見つめた。



の事が好きだよ・・・?」



この状況に明らかに合っていない笑みを浮かべると、の頬は更に赤みを増した。


・・・小さい時に言ったよね?ずっと僕に"お友達"で居てくれって・・・。
 でも、もう押さえきれないんだ・・・」



そう言ってまた唇を重ねる。不思議とは抵抗はしなかった。


・・・・・・というより、固まっているようだったけど。



固まっているの顎を掴んで耳元に口を寄せる。






「選んで・・・・?もう、十分待ったんだ。
 僕の事が嫌いなら突き放して・・・?もう、良い"お友達"では居られない」







そっとの耳に軽く口付けてから、固まっているの上からそっと退いた。

「明日の朝、楽しみにしてるよ」


そう呟いて、僕はゆっくりと保健室を後にした。



































僕が"お友達"で居られる最終期限は、もう過ぎた。


僕はそこまで我慢強くない。


迎えに行くよ、僕のお姫様。


もう、逃がさない。
































Deadline,



















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遠野君は何気にお気に入りです。(笑)
報われない恋をしている彼に幸あれ! 
ちなみにあのボールを当てたのはわざとだと信じたい。