少しオレンジが入った髪色をしている彼を初めて見たのは
アキラ君や深司君達、男子テニス部の試合を初めて見に行った日だった。



















アキラ君が
「なぁっ!明日の試合絶っっ対見に来いよ!」 

と何度もあたしに念を押していた

「もー!分かったってば!その代わり絶対勝ってよね?」

冗談交じりで言ったら アキラ君は本気でとっちゃって

「当ったり前だろ!俺はもう負けねーよ!」

とかなんとか大声で叫んでいた記憶がある

あたしは今になってその言葉を言った自分を後悔した

だって今 あたしの目線の先にあるのは

オレンジ色の髪をして アキラ君と同じコートに立っている

切れるような瞳を持つ 千石清純だったから





















何時もあたしの瞳に繊細に写っていたアキラ君の赤色の髪も

彼の前では霞んでしまってしょうがない

ボールに向かって只走っている その姿

額から流れるその綺麗な汗に 紡がれる勝利への台詞たちに

あたしの体は酷く火照った気がした


結局 彼はアキラ君に負けてしまった












気になって 気になって堪らなくて
勘が向くままに走ってみたりして
そんな時 瞳の片隅にオレンジ色を見つけた

水道から流れる水で 水よりも綺麗なオレンジ色の髪を濡らしていて

嗚呼、そのが流れるさまは魅力的でしょうがない

暫くその様子に見入っていたら 彼があたしの視線に気づいてしまって

ニヤリ と口端をあげてみたりなんかして


「こんにちは〜?君、可愛いね〜?その制服・・・不動峰だったっけ・・・?」

自分で言っておいて一瞬寂しげに笑ったのをあたしは見逃せなかった

何か喋りたくても喉が許してくれなかったから 代わりに大きく頷いて
そうしたら彼はクスクス笑みを零して

「君・・・名前は何ていうの〜?俺は千石清純って言うんだ〜!」

「あ、・・・知ってる」


彼の笑顔が可愛いくて ついクスリと笑んで答えたら 
彼は吃驚したように一瞬顔を歪ませて
それからまた 不敵に笑んであたしに携帯を差し出して

「アドレス教えて?俺、何だか君にすっごい興味沸いちゃったんだ。」

そんなストレートな台詞に落ちない女なんか居ないでしょ?

結局あたしは、言われるがままに名前とメールアドレスを交換した
でも、こんな展開が嬉しく思ってるあたしもいるから 何だか複雑で












そしてあたし達は 一ヵ月後にはもう名前で呼び合う仲になった。



キヨ、。 なんて 何だかとってもくすぐったい響きで



































珍しく部活が休みだった日、キヨから携帯にメールが入った。

  送信者:キヨ
  件名 :やっほ〜☆
  内容 :今日暇ー?
      遊ぼうよ!お兄さんが奢ってあげるよー?(笑)
      オッケーだったら、何時ものカフェで待ってるよんv
      来るまでいつまでも、なんてねー?


思わず携帯を持って一人で笑み零してしまって
ぎゅうっと 携帯を握り締めて 急ぎ足でいつものカフェへと向かった


カラン とドアを開けるときにいつも聞く音 声

いつもと同じ音楽 オーナーさんに聞いたら昔のアメリカのジャズらしい

そして いつもの席に居るオレンジ色の後ろ頭へと あたしは息を弾ませて向かう
とびっきりの笑顔を用意するのを忘れずに 恋人同士でもないのに可笑しいとは思うけどね?

「キヨッ、お待たせ!待ったー・・・?」

キヨの前の席へと座って、携帯を弄っていたキヨに恐る恐る問いかけると
ニッコリ笑顔で「遅いよー。」の一言。

「しょ、しょうが無いでしょー?ココから不動峰の方が遠いんだからねー?
 誰かさんが来るまで待ってるとか言い出したから、ダッシュで来たのになー」

ちょっとわざとらしく拗ねてみたら、キヨは可笑しそうにあははっと笑って

「はいはい、冗談ですよーっと。はい、カフェオレ。頼んどいたよ?」

笑顔で差し出されたカフェオレに、ついつい可笑しくて笑っちゃった

「やっぱり、来る事予測してたんでしょ?あたしが来なかったらカフェオレどうするつもりだったの?」

受け取って一口飲んでから問いかけてみると ニンマリとしたいかにも自信たっぷりって顔で

「だって、が来ないっていう考えは出てこなかったからさー」

ねぇ、そのいかにもな女たらしのような笑みで いったい何人の女の子を虜にしてきたの?
思わず問いかけたくなった。

でも口にはせずに 言ったらこの関係が壊れてしまいそうだから
そっとカフェオレごと飲み込んで 閉まっておくの

もうすっかり氷も溶けて少し薄くなったカフェオレを飲み干すと
キヨが待ってましたと言わんばかりに立ち上がってあたしの腕を掴んだ

「さ、行こっか?飲まれないまま終わると思ってたカフェオレさんはもう無くなっちゃったみたいだしねー」

そんなキヨの満面の笑みにあたしが有無を言える訳無くて
ただ引っ張られるまま オーナーさんに小さく挨拶するのを忘れずに店を出た

「ね・・・キヨ、どこ行くのー?」

まだあたしの腕をひっぱったまま歩き続けるキヨに 後ろから問いかける
「んー・・・今日はにテニスの楽しさを教えてあげようと思ってねー?」

そういえばキヨの肩には珍しくテニスバックが掛かっていた
そのまま歩き続けて辿り着いたのはストリートテニス場
以前にも アキラ君に誘われて杏や深司君と一緒にやった事があったから
結構愛着がある そんな感じがした
キヨのココを見つめる瞳を見ていると キヨもキヨなりに愛着があるみたいで
嬉しそうに頬を緩めてココを見渡しているのを見ると あたしの胸が異常に高鳴ったのを感じた

「さ、それじゃあ早速やろっか?」

いそいそとテニスバックからラケットを2本取り出してあたしに手渡したキヨ
キヨのそんな楽しそうな笑顔は久しぶりだから 思わずあたしの頬も緩んでしまってしょうがなかった

キヨがサーブを打ち、あたしが打ち返す  

テニスなんて随分久しぶりで打った球はキヨとは反対方向に飛んでしまう

でもそんな球を笑顔で取りに行って軽々と打ち返すキヨ

その瞳は 初めて見た時のような 切れるような印象的な瞳で

キヨをこんな目にするテニスが なぜか羨ましくて堪らなかった




キヨが打ち返してきたボールをあたしは返さずに
その場所に棒立ちして ボールを見送る
そんなあたしに キヨは不思議そうに首を傾げて
あたしはラケットを地面に置いて キヨのところへと駆け寄った


「キヨッ・・・好きっ・・・・・・。初めて見た時から好きだったっ・・・。・・・っ・・・ボールじゃなくてっ・・・あたしを・・・見て・・・?」

キヨの目をまっすぐ見つめて言う

キヨはフッと笑ってあたしを抱き締めた

「当たり前じゃん。俺は最初からしか見てなかったよ〜?に随分惹かれちゃったからねv」

キヨはそう言ってあたしの瞼にキスを落とした

顔が一気に熱をあげたような気がした
キヨにキスをされた瞼から涙が一気に零れ落ちて
思わず 抱き締めてくれていたキヨに思いっきり強く抱き返した
あたしの気持ちは伝わってたのだと、強く感じた。



































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