ああ、痛い。ズキンズキンと下腹に響く鈍い鈍い、痛み。
そう、今日のあたしは紛れもなく1か月に1回来る、女の子の日で。
元々そんなに生理痛がひどい訳じゃないあたしはいつもは平気なんだけど。
今日は一体あたしの子宮に何があったのか、滅茶苦茶な痛みが朝からあたしを苦しめるのだ。
朝起きた瞬間から痛くて、本当は学校なんか微塵も行きたくなかったのに。
今日は久しぶりに雅治のテニスの練習が休みだからと、2人で遊びに行く約束をしてたから。
それだけがあたしの体をかき立てて、ヨロヨロの体で学校に行って、やらかした。
体育の時間に見事倒れてしまったあたしは、今は学校の保健室で横になっている状態。

「はあ…最悪」

「何が"最悪"なんじゃ?」

ふと、あたしが漏らした呟きに反応する声が一つ。
ベッド脇に引かれていたカーテンから顔を出したのは雅治だった。

「授業は?…っていうか何でココに居る事知ってんの?」

「サボった。何、俺のへの愛の力があればこれ位」

思わず眉間に皺を寄せてしまった。
愛の力なんて臭い言葉、この男が言うと更に胡散臭く聞こえてしまったから。
あ、そ。と適当に返事を返して布団を引っ張って顔を半分だけ隠した。
雅治は完全にカーテンの中に入るとあたしの寝ているベッドに腰かける。
さっきまでの冗談を言う何時もの表情とは違って、ほんの少しだけ目尻を下げてあたしを見て。

「朝から体調悪かったらしいな。…何で休まんかったんじゃ?」

其の瞳があたしを心配してくれたのかと思うと背中がぞくぞくするくらい嬉しかった。
でも雅治を心配させたのは同時に悲しくもあって。あたしは素直にごめんなさいと呟いた。
暫くの沈黙の後、はあと聞こえる溜息。

「謝らんでええ。けどあんま無理してくれるな。…人が倒れたと聞くのは心臓に悪い」

特に、お前さんはな。そう付け足して雅治はあたしの頭をぽんぽん撫でてくれた。
やっぱり、心配してくれてたんだ。何だか涙が出そうになった。

「…ごめんね。心配掛けて。ついでに今日遊べそうに無くて」

雅治を見上げて言ったら雅治は何かを考えるような表情をしてから、もう一度溜息を吐いた。

「そういう事か。…ったく、可愛い事をしてくれる」

頭に乗っていた手はぐしゃり、と髪の毛を崩すように包み込んで。
そのまま近づいてきた雅治はあたしのおでこにちゅ、と軽いキスをした。

「ちょ、病人に何すんの!」

「くくっ、俺の為に無理、してくれたんじゃろ?心配すんな。休みはまた幾らでもあるぜよ」

「っ!」

感付かれたあたしの行動に、あたしは羞恥心から頬を染め上げてしまった。
どうしてこの男はあたしの思考を全部読みとってしまうのだろう。
だけど目の前で嬉しそうに目を細める雅治が、愛しくてしょうがない。





(とりあいず今は、風邪を治す事が先決じゃな。ほら、俺に移しんしゃい)
(わ、キスすんな馬鹿!それに風邪じゃなくって只の生理痛だから!…あ)
(…ほう、そいつは大変。早退した方がいいな。俺が家まで送っちゃるけえ、帰るぜよ)
(いいっ…!いらない!何か変な事する気でしょ?)
(変な事、とは侵害じゃの。それに…"イイ事"の間違いじゃろ、?)







お休みは明日に

 (原因不明の腰痛により)





林檎は軽い方なんですけど、たまに凄い辛そうな子とかいますよね。…大変だ。