「…何、これ?」 雅治があたしの首に着けたのは革で出来た、例えるならそう、犬とか猫に着けるような首輪みたいな物だった。ああ、でもヴィジュアル系の人とかゴスロリの人なら普通にしているのかな。別にあたしはその類が好きとかそういう訳でも無いし、雅治がそっち系が好きだったとも聞いた事が無い。かと言ってそういう類の物が嫌いな訳でも無いけれど。何を言いたいかというと、つまり、雅治がこんな事をする意味が全く分からないのだ。言葉で、視線で雅治に問いかけても雅治は満足そうに笑うだけ。何時もそうだ。雅治は何も言わない。雅治が何も言わないから、あたしも何も言わない。あたしは雅治が好きだし、雅治もあたしを愛してくれていると感じられるけど、あたし達はお互いの全てを知る事は出来ない。言葉が足りないんだ、あたし達は。 「ねえ、聞いてるの雅治?何よ、これ」 何も言わずに只その口端を綺麗に上げるだけの雅治に苛ついたあたしは、再度雅治に問いかける。すると雅治はあたしの首に付けた"其れ"を愛おしそうに見つめて、顔を近づければ首にキスを落とした。ちゅ。ちゅ。軽いリップノイズが静かな部屋に響く。そんな状態がしばらく続けば、雅治はその内あたしをゆっくりと押し倒した。半そでを着ていたあたしには床の冷たさが何処か心地よくて。でも首の違和感が邪魔だった。手を掛けて外そうとすれば、雅治はあたしの手をそっと止めて、そのまま手を上に持っていって片手で拘束する。そんな所作とは裏腹に穏やかな笑みを浮かべた雅治は、またあたしの頬にちゅ、とキスをした。かと、思えば次にはあたしの唇を貪るみたいに激しく犯した。は、と洩れる息とくちゅりという舌と舌が絡まりあう音がやけに耳について羞恥から頬が染まるのが分かる。―何分間そうしていたかは分からないくらい頭がボーっとし始めた時に、雅治はようやく唇を離した。息が荒いあたしとは相対して随分と余裕気な表情で。そして何時も通りの低い声で、あたしの耳元にぽつりと囁いた。 「コレ外すなよ、。…外したら、俺はお前を殺す」 |