寝室にあるベッドに寝転がって、本を読んでいると キッチンの方から香ってきた、甘い匂いが鼻についた。 その匂いがあまりにも甘美そうで 俺は花の香りに導かれる蝶のように フラフラとおぼつかない足取りでキッチンへと向かった。 「苺、かの?」 辿り着くと、予想通りキッチンへ向かっているがいた。 「うん、そうだよ。苺ジャム」 美味しそうでしょ? と振り返って嬉しそうに笑む 「甘ったるい匂いやの…寝室まで匂いが来たぜよ?」 言葉とは裏腹に、優しい声でに告げると 「ホントに?それじゃあ部屋中苺の匂いかー」 クスクス笑みを零すは、またコンロに掛かっているであろう鍋へと視線を移して 俺はその動作に少しだけ興味を持っての隣へと歩みを進めた。 「ほぉ…結構本格的なんじゃな?」 「へへー、でしょ?早くから頑張った甲斐があったよー」 言いながら、丁寧に丁寧に鍋の中の苺をかき混ぜる。 その苺の赤色に、体の芯が疼いたような気がした。 人間は赤色に欲情するって本当かのぅ…? 何処かの本で読んだことがある [人間は、赤色に愛と言う意味を持って人々と接している] まあ、本当かどうかは知らんが…。 そんな事を思いながら、相変わらずの手によって形を変えていく苺を見下ろした。 は砂糖を鍋に入れると 出来た! と嬉しそうに叫び 俺は、その苺ジャムの量の多さに少し吃驚して 「そんなに大量のジャム、何に使うんじゃ?」 「んー、食べ切れなかったらブンちゃんにでもあげればいいんじゃない?」 と楽しそうに笑むを見ると なんだか少しムカついた。 「なぁ、。これ味見せんのか?」 鍋を指差して問うと あからさまに忘れてたという顔をして 慌てて鍋に人差し指を入れて指先でとってみようとするだが たった今火を消したばかりの鍋から そんなに早く熱が冷める筈も無く 「あっつーい!!!」 案の定 は火傷をしてしまった よほど熱かったのか 涙目でジャムのついた指先を凝視する 俺はそのの指先を 手で引っ張って ぱくりと口に含んだ 指先についている僅かなジャムを 舌で丹念に転がして は今度は 先ほどまで凝視していた自分の指先を舐めている俺を凝視して その 小さな頬を赤く染めていた 指先のジャムを殆ど舐めると ゆっくりと舌でラインをなぞりながらの指先を解放していく 名残惜しそうに 離れる前に指先にキスを落とすのを忘れずに 「んー…やっぱり苺の味じゃのう…」 まだ口の中で舌を転がしている俺にが俺を見上げて 「当たり前じゃん!苺ジャムなんだから…。ねぇ、結局美味しいの?美味しくないの…?」 恐る恐るが問うと 俺は先ほどが火傷をしたのもお構いなしで 鍋に指先を入れて軽くジャムをつけ 「も食べてみれば分かるぜよ…?」 口元に不敵な笑みを浮かべたまま 指先についたジャムを口に含んで そのままの腕を掴んでを引き寄せて 唇を合わせる 不意打ちをくらったの唇は丁度良く隙間開いていて 舌を滑り込ませるのには十分過ぎる位だった の舌に 俺の舌に纏わり付いたジャムを絡めて 俺の口の中は 苺ジャムの甘ったるい味と の特有の甘い味に満たされた ようやく唇を離したときに出来た 俺とを繋ぐ 細い 赤い糸 多分苺の残骸だろうが と繋がっているという事が嬉しく思った そして、赤色の糸というのが 世間一般で言う 運命の赤い糸というヤツと同じな事に気づき 柄にも無く そんな偶然がとても愛おしいと感じてしまった 「ん…甘い、ぜよ」 満足そうに笑んだ俺に はまだ赤面したまま俺を見上げ 「馬鹿雅治」と俺の胸に小さく呟いていた。 結ばれた赤い糸 ------------------------------------------------------- この糸が、未来永劫消えないようにと。 お題提供:Dark Strawberry様 (閉鎖) |