「星になりたいな」
俺の横で行き成りが呟いた。
はあ、と白い息を吐きながら夜空を見上げる。
月に照らされて何時もより更に青白く見えたはとても儚げに見えて、
思わず、コートのポケットに突っ込んであったの手を強く握り返した。
「行き成り何を言い出すかと思えば・・・何でまた『星』になんかなりたいんじゃ?」
「だって、星になったらずっと輝いていられるでしょ?沢山の人に綺麗だって言って貰えるし!」
先程とは打って変わっていつもの笑顔を見せた。
でもその無邪気な表情で紡いだ言葉は俺から見れば不快なこと。
「確かに星は綺麗じゃがの、俺はなりたいとは思わんぜよ」
溜息を吐いた俺に少し不満そうに見上げるの視線と
何で?という小さな声が同時に聞こえた。
「、星の光が地球に辿り着く速さってどれだけか知っとう?」
俺の唐突な質問に目を丸くする。
えっと、と考え込みそうになる前にふと気付いたのか
「雅治が星になりたくない理由とどこが関係あるの?」と怪訝そうに聞いて来た。
「・・・今俺らに見えてるあの光が地球に届くのは何万光年とかかっちょる」
じゃからあの星なんか今はもうとっくに無くなっとる。
そう付け足した俺に顔を上げて星を眺める。
何万光年も・・・、とが隣で呟く声が聞こえた。
「でも、それだけ時間がかかっても誰かに喜んで貰えるって幸せな事じゃない?」
それが好きな人だったら、尚更!と笑うに思わず小さく頬が緩んだ。
どこまで貪欲であれば気がすむんだろうか、俺の彼女は。
ポケットに突っ込んであったもう片方の手をの頬に添えて、そっと唇に触れるだけのキスをした。
行き成りのことで目を大きく開いて俺を凝視するを見ながら、
の冷えた頬に手を添えたまま言葉を繋げた。
「俺はそこまで貪欲にはなれん。自分が消えまでして相手に喜んで貰おうとも思わん」
「ましてやそれが綺麗だっていう感情だけなんて、耐えられん」
「どっちも同じ一瞬だけのもんなら、俺は直に感じる体温の方がよか」
そう言って笑ったら、はバカと呟いて俺に抱きついてきた。(俺が今抱き締めようと思ったのに)
の背中にそっと手を回して、ぽんぽんと子供をあやす様に叩いた。
「満足してくれんたならはよ帰ろ、いい加減寒くて死にそうぜよ」
半分冗談半分本気の俺の言葉には満面の笑みを零した。
うん、と頷いて俺の手を強く引くが小さな子供みたいでまた笑った。
俺が足を止めれば振り返るに、小さく告げた。
「やっぱり俺は、この温もりさえあればええ」
言葉と同時に握る手に力を込める。
そんな俺の手をそっと握り返すが今、どうしようもなく愛おしい。
スターダストフィッシング
-------------------------------------------------------
最近突然星とかに感動を覚えたりする今日この頃。