「ピロリロリン♪」
ピカリと光った携帯に、ばっと顔を上げてディスプレイを開いた。
見つめた画面の先に映ったのは「」の名前だった。
親友からの0時ジャストのメール、何時もならかなり嬉しいはずなのに。
からのメールは勿論嬉しい事には変わりは無いけど、
ジレンマ、きっと多分絶対あいつの所為なんだ。
忍足侑士。氷帝学園テニス部レギュラー。
伊達眼鏡男。
ロン毛のくせにめちゃくちゃテニスが上手くて、おまけにモテモテで、
伊達のくせに眼鏡がムカつくぐらい似合ってて、ポーカーフェイスで、
一人で勝手に東京行くとか決めた最低最悪な男。
私の、彼氏。
「会いに来るから、待っとって?」
侑士が東京に行く日に言った言葉が今でもリアルに甦ってくる。
あの時は死にそうなくらい嬉しかったのに、今は違う。
だって侑士は嘘つき、だ。
いつも忙しいからってメールや電話ばっかりで、全然会いに来てくれない。
メールや電話が嬉しく無い訳じゃない。
だけど、やっぱり淋しいという感情は生まれてしまう訳で。
今、侑士がテニスを頑張っているのは痛いほど知っている。
メールの内容や電話がほとんど、それだから。
それに、今年は侑士も私も三年生。中学最後の年。
誰だって、最後は悔いの残らないようにやりたいと思うのは分かってる。
侑士はテニスが大好きだから、尚更のこと。
全部分かってる、分かってるけど。
それでも、淋しいものは淋しい。会いたい。
私の思いが一方通行な気がしてきて、だんだん目に涙が溜まってきた。
少しぼやけて見え始めた携帯の画面を閉じようとしたら、
ふと、掌で小さく震えた携帯。
専用の着信音。侑士からの電話の音。
私は慌てて涙を拭って通話ボタンを押した。
「もしもし、侑士?」
「こんばんは、?何やお前いつもより電話出るん遅かったで?寝とったんか?」
「ううん、寝てないよー。ってそんなにいつも早かった?」
「ああ、めっちゃ早いわ」
電話の向こうから侑士のかすれた笑い声が聞こえた。
さっきまであんな事考えてた所為で、携帯越しの声がやけにもどかしく感じる。
「で、どーしたのこんな時間に?侑士こそ眠れなかった?」
「んー・・・なんや、に会いとうなってなぁ」
「え?会いたくなったら電話なの?(笑)
電話するぐらいなら会いに来てくれればいいのに・・・」
「あ、会いに行ってもええん?今夜中やで?」
「ゆーしならいつでも大歓迎ですー」
あははっと冗談で返した私は、次の一言で固まってしまった。
「そうか、ほな遠慮なく」
声が聞こえたと同時に、窓にコツンと何かが当たるのが聞こえた。
まさか、と思ってカーテンを開いて下を見てみたら
携帯を耳に当てながら、ひらひらと手を振る侑士がいた。
「侑士?!」
思わずブチッと携帯の電源を切って駆け足で下に向かった。
玄関の扉を開いてみると、そこにいたのはやっぱり侑士で。
「久しぶり、?」
へらりと頬を緩めて笑う姿も、いつもの侑士だった。
「久しぶり・・・じゃないでしょ!ばかっ、会いに来るの遅いよ・・・!」
思わず侑士の傍まで駆け寄って、その広い胸を軽く叩いた。
「すまんなぁ・・・。でもな、会いに行くならやっぱの誕生日に会いたかってん」
そっと侑士の腕が私の身体を包み込む。
ふわりと香った久しぶりすぎる侑士の香りに、涙がぶり返ってきそうだった。
「お・・・ぼえてたの?」
嬉しさから涙が出そうになるのを堪えて、侑士を見上げる。
「当たり前やん。何で俺が大好きな彼女の誕生日忘れなアカンの?そんなヒドイ男やないで?」
くすり、と私を抱き締めたまま嬉しそうに言う侑士。
その笑顔に、今まで我慢していた涙がいよいよ零れてしまった。
ボロボロと涙が頬を伝うのを感じた。
「ー・・・何で泣くん?泣かんといてーや、折角会いに来たんやで?」
「ふふっ・・・そうだね。私ってば何で泣いてんだろうねー・・・」
服の袖で涙を拭いてから、満面の笑みでそっと侑士を見上げた。
「侑士、ありがとう」
「・・・ありがとう、はこっちの台詞。・・・生まれて来てくれてありがとうな?」
ちょこん、と鼻の頭を私の鼻に合わせて侑士が笑った。
触れ合った肌から、侑士の暖かさが伝わった。
貴方と言う奇跡が今
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鼻と鼻を触れ合わせるのは、「お互いの命を分け合う」という意味なんだそうです。
神堂様に捧げます!宜しければお持ち帰り下さいませ!
HAPPY BIRTH DAY YUKINA SHINDO! written by 蜜蜂林檎 (2006,11,29)
MATERIAL BYマリーテレーズ