大嫌いな国語の時間、帰って来たテストに先に叫び声をあげたのは私じゃなくて
後ろの席に居る侑士だった。
叫び声で驚いて後ろを振り向けば、私のテストを覗き込んでいる侑士の姿。
その表情はまさしくこの世の終わりを見たかのような感じだった。(さすがにそこまでじゃないか)






「なっ、何やこのひっどい点数は・・・!」



「うわっ、侑士私のテスト見て叫んでたの・・・?!勝手に見ないでよ、バカ!」



「関西人にバカは禁句やて前にもゆうたやろ!!
 じゃなくて・・・、この点数は必死の努力の結果かいな?」



「ううん、全く勉強してないよ?」





けろっとした私の態度に侑士は溜息を吐いた。
その余りにも大きな溜息にむかついた私は仕返し、とばかりに
侑士のテストを覗いてやったけど、余計自分の点数の悪さを実感するだけだった。
どうしよう、私ってそこまで国語苦手だったっけ?とつい頭がこんがらがってしまう。
頭もよくてスポーツも出来ておまけに顔まで格好良い(性格は入れないけどね)
私のすぐ後ろにいる侑士は本当に人間なのかと改めてまじまじと顔を見つめてしまった。
そんな私を見て侑士は何を思ったのか、暫く何か考えていたかと思うと急ににっこりと笑い始めた。






、今日の放課後デートしよか?」



「ええっ?!ホントに?!」



「あぁ、ホンマに。但しな、俺行きたいトコあんねん。付きおうてくれる?」



「うん!勿論良いよ!」



久しぶりのデートの約束。しかも侑士の方から誘ってくれるなんて。
私は嬉しさやらなにやらですっかり舞い上がってしまっていた。
つい数秒前までのテストの点数の事もすっかり忘れて嬉しさに浸っていた私は、
侑士が怪しい笑みを浮かべているのに気付くはずも無かった。







































「ねぇ、侑士。そういえば侑士の行きたい所ってどこなの?」




真っ白なコンビニ袋を提げながら私はもう片方の手を繋いだ先にいる侑士の顔を見上げた。
ガサガサという特有の袋が擦れる音が声と重なって聞こえたけど、
侑士の耳には普通に届いてると思う。多分。





「んー・・・、まあ待っとき。もうすぐ着くで」



「もうすぐ?この近くに何かあったっけ・・・?」





この近辺の建物を頭の中で描いていると、侑士が頭の上でホラと呟いた。






「着いたで、。ココや」





にっこりと振り返った侑士の後ろにあったのは、『図書館』と大きく書かれた看板だった。
私はすぐにくるりと体の向きを変えて来た道を戻ろうと思ったけど、
繋がっていた侑士の左手がそれを許さなかった。
嫌がる私を他所に侑士はぐいぐいと手を引いて図書館の中へ入って行く。





「ちょっと侑士!何で図書館・・・?!」



「ん〜、やっぱ勉強するって言ったらココやんなv」



「無視すんな!何で・・・久しぶりのデートかと思ったら!私勉強なんてしたくないよ!」



「あかん。、今日のテストの点数見たやろ?
 俺が教えてやるからちゃんと勉強せなヤバイで」




侑士の顔に間近で言われたら反論出来るはずも無く。
私はいつのまにやら椅子の上に、隣には侑士、
目の前にはずらりと並んだ教科書やらノートやらが広がっていた。





「さ、始めんで?まずはテストの復習からにしよか」



「・・・」




「ほなココの問題。何でこうなるか分かるか?」




「・・・」




?」



「・・・侑士、分かんないよ。久しぶりのデートなのに何でわざわざ勉強すんのさ!」





侑士と一緒に居られるのが嫌な訳じゃ、無い。
ただ切なかった。折角久しぶりに一緒に遊びに行けると思ったから。
侑士が隣にいたら、いつもの景色だって数倍も綺麗に見えるし、些細な事だって数倍楽しくなるから。
勉強が死ぬほど嫌という事と、高まっていた期待を裏切られた事で私はもう泣きたくなってきていた。
思わず顔を俯けてしまう。




「・・・、しゃあないやろ?今の俺等は受験生やねんから」



「・・・侑士はもう推薦で学校決まってるじゃない」





「そりゃあ、俺はな?でもはまだやろ?
 が一緒やないとそんなん意味あらへんのやで?」




「へ・・・?」



は、俺と同じトコ行きたないん?」





反則、だ。そんな切なそうな目で見られたら。
NOなんて言える訳無い。言いたくも無いけど。






「分かった・・・よ。そのかわり、途中で呆れたりしないでよね!」




そっと顔を上げて侑士の顔を覗き込んだら、とびっきり嬉しそうに笑った侑士が居た。
































君の場所まで後5分!



































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王道の図書館でお勉強。忍足には何か王道ばっかりやらせてるなぁ・・・と!
受験生の皆さん、お勉強頑張って下さい!そして頑張りましょう!(笑)