カシャン、と冷たい鎖の音が静かに響いた。
無機質な音は怪しく共鳴するように室内に残っては消えていく。
薄暗くて前がよく見えないけれど、その音が何よりも私の恐怖を煽っていた。
部屋の中にはもう、侑士が作り出す音と私の恐怖心しか感じ取れない。




何も見えない暗闇の中でも、必死に後ずさりをしていく。
音が近づく度に、一歩ずつ慎重に後ろに下がるけれど、そのスピードは変わらずに。
怖いくらいにゆっくりと、私を追い詰めていく。
そう、ゆっくりと。じわじわと獲物を嬲り殺す獣の様に。





後ろにベッドがあるのに気付かずに、
私は兎に角"目の前のもの"から逃げようと夢中になっていた。
ふと気付いたら膝が崩れてベッドに座り込んでいて、
侑士は待っていたとでも言うように一気に私の目の前までやってきた。





「なぁ・・・どないしたん?そないな顔して。何か怖いものでも見たんか?」





僅かな逆光の所為なのか、私が侑士よりも下にいるからか。
侑士の表情は見えなかった。だけど、聞こえた声は変に優しく柔らかくて。





「侑士っ・・・。」



「何や、?声・・・震えとるで?」





くす、と侑士の笑い声がまた部屋に響いた。
それと同時に聞こえた、鎖が擦れ合う無機質な音。
侑士は私の頬にそっと手を当てて頬を撫でてくれた。
ひんやりとした侑士の手の冷たさに思わず身震いする。





「侑士・・・お・・・願いだから・・・止めてっ・・・。」



「・・・今更止める訳無いやろ?暴れるんは無しやで。俺も傷つけた無いねんから。」





そっと侑士の唇が私の唇に重なった。
僅かに開いていた隙間を抉じ開けて侑士の舌が中に入ってくる。
舌と舌が、絡み合う。意識まで持って行かれそうな程の、一瞬の快楽。











長い長いキスが終わった頃、私の両手は既に鎖の中にあった。





















歩みくるものは、運命
(そう、捕えられるのも又)





























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(時空の流れに逆らってはいけません。