さよならなんて言うつもりはなかった。あんな顔をさせたい訳じゃなかった。涙を流してほしくもなかった。只純粋に愛してあげたかっただけなのに。俺達の愛はどうしてこうもすれ違うんだろうか。俺の全身全霊の想いはいつだっての隣を掠めていく。そして、の愛すら正面から見た事は無い。嗚呼、哀しいかな。元々が合わなかったんだろうか。愛し合ってるのに愛はお互いに伝わない。俺達はきっと誰よりも同じで誰よりも真逆だったんだ。その証拠にの考えてることはいつだって分かったけど、俺はそれに対して何もしてやれなかったんだから。結局俺達の間に在ったのは"恋人"なんて暖かい響きのものではなかった。お互いに求める愛が違うから、与える愛も異なる。そんなことは最初からわかっていたのに。破滅の道を辿ると知っていながら茨へと進んだ俺達だから、神様は罰を与えたのだろうか。実際俺との間にはやさしい時間なんて存在しなかった。癒してやりたいと思う気持ちはあるのに、会えば喧嘩ばかりだった。ヒステリックな声をあげた彼女を思いきり殴った事もあった。(それは今でも後悔しているけど)振り返って隈なく探してみても俺達の関係にプラスの文字はない。きっとそれはこれから先もそうなのだろう。なぜだかしっかりと断言できる。俺とに未来なんかどこにもない、と。だってそうだろう?はたった今俺が殺してしまったんだから。いや、実際にはは青酸カリを飲んで死んだのだから俺が殺したと言えば少し嘘になるけど。でも原因は間違いなく俺にある。もきっと俺達の事に思い悩んだ末に、自殺を選んだんだろう。だから俺が殺したんだ。何も与えあえないのに、身体が惹かれあってどうしても離れる事が出来なかった彼女を。面白いね。こんなにも空しい事が世界に在ったのだ。傍に居ても孤独を分け合う事は出来なくて、だけど最後にはやっぱり独りを思い知らされる。きっと俺達はこの世に生を受けてから、世界に決別するまで永遠に誰かと心から混じり合う事なんて出来やしない。嗚呼、でも、今なら大丈夫なのかな?今の後を追って俺が死ねば、後は何もかもが遠く及ばない場所。下らない世界なんて遥か下方に見下ろしながら、俺とは今度こそ愛し合えるのかな?1%でも可能性があるなら試してみようか。青酸カリはもう全部が使い切ってしまったけど、大丈夫、俺はナイフで身体を抉るくらい動作無いから。だからもうちょっと待っててほしい。の涙はそっちに行ってから拭ってあげるから。だって今拭っても意味無いだろう?どうせはそっちでも泣いてるだろうし、もうすぐ会えるから。楽しみだね。死ねば俺達の愛はようやく、結ばれるんだ。 |
(だけどごめん、俺は今後悔はしてないよ)